虫の知らせ

#105 / 増毛のかれずの井戸

干ばつの時に井戸を掘って石になって村を救った男

住所
増毛郡増毛町別苅
緯度、経度
43.850267, 141.504889
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

かれずの井戸 --増毛--

そのむかし、増毛では春から少しも雨が降らず、毎日、毎日、日照り続きの年がありました。作物は枯れ、人も馬も水に困っていました。

オンネ古茶内と言う増毛の近くの海岸にある番屋の帳場さんは、正吉という人でとてもやさしく、情深い若者でした。

「こんなに長い間、一つも雨が降らないと川の水もかれてしまい、人も動物も、草も木も、生きてはいけなくなる。」

「おれたちで井戸を掘るべ。」

正吉は、村人の先頭に立って井戸を掘りはじめました。村人はみんな一生懸命になって、井戸を掘りました。あっちでも、こっちでも、三日も四日も掘りました。

しかし、水は一滴もでません。焼けつくような太陽の下で、みんなはがっくりとしてしまいました。もう、これでおしまいだと誰もが考えました。でも正吉は、掘り続けました。

「このままだったら、みんな死んでしまうぞー。」

「どうせ死ぬなら、掘って、掘って、堀まくって死ぬベー。」

それからまた、三日三晩、掘り続けました。やっぱり水は出ませんでした。村人は、天をうらめしそうに見つめました。雨は降りそうにありません。暑い太陽だけが、かんかんと照りつけているだけでした。

「ここにいたら、死ぬのを待つだけだ。」

「水のある所へいくべー。」

村人は、二人、三人と村を離れていきました。正吉は、それを知るととても悲しい気持ちになりました。

「村人が次々にほかの村に行ってしまったら、オンネの村はなくなってしまう。」

次の日、それでもまだ二、三人の村人が井戸を掘りに出ました。

「きっと、正吉は掘っているベー。」

そう、話しながら村人がやって来ました。

「あれーっ?正吉がきていないぞー。」

「あいつも、とうとうあきらめたか。」

そう言いながら、掘った井戸をのぞいた村人の一人がびっくりして声をあげました。

驚いた村人が、井戸の底に降りていきました。井戸の底にあったのは、正吉の死体ではなく、正吉の姿そっくりの大きな石でした。村の人たちは、みんなでその大きな石を動かしました。

すると「ポコン」という音がしたかと思うと、井戸のそこから「水」がこんこんとわきだしたのです。村の人たちは、びっくりするやら大喜びするやらで、大騒ぎになりました。そして、、井戸の水を腹いっぱい飲みました。

しかし、正吉の姿は、どこにも見あたりませんでした。

「正吉は、自分の命を神様にささげて井戸を掘ったんだ。」

「だから、水が出てきたんだぞー。」

井戸の大きな石は、正吉が命を神様にささげ、村人のために石になったものだと思いました。そして、村人たちは、みんなで力を合わせ大きな石を井戸の底から上げました。

その後、古茶内にある稲荷神社には、今でもこの石が「水上様」としてまつられています。

(北海道の伝説 渡辺茂・再話)

北海道口承文芸研究会編「北海道昔ばなし 道北編」1989 中西出版
参考資料・情報など
北海道昔ばなし 道北編
北海道口承文芸研究会編「北海道昔ばなし 道北編」1989 中西出版
現地確認状況
未確認
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
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