竹森山中腹にある池と龍神様の神社
六十九話 竹森神社
九郎岳の麓に一つの小高い山がある。姫川の本流と支流にまたがるこの山は竹森といい、山頂に堂宇がある。いつの時代か創立年代はわからないが、「竹森山の頂上に山神社が建った。開祖泊弥兵衛」とだけわかる。竹森山は、海上よりはっきり認めることが出来るので、出漁者たちはこの山を羅針盤として出船、入船、操業など海の安全を守る大事な山であり、漁師たちも信仰をしている。
「ある時、乙部で生まれた一漁師が北の海で一代を築こうと発奮してオホーツクの沿岸に家族ともども住居をかまえた。
漁師は来る日も来る日も沖に出て、大漁しては港に帰る毎日が何十年も続いた。息子も孫も成長し、いくばくかの財をも成し、若かったこの漁師もいつの間にか老いた。何の不安もなく過ごした数十年――。
その後、老漁師は大そう思い病気にかかってしまった。医者にかかってもなおらない。身の上をみてもらっても病名もわからず、日増しに病気が重くなっていった。その時、老漁師は夢うつつ枕もとに銀色した一羽の雀が飛んできて一生懸命話しかけているのです。
『竹森神社からの使いの雀です。あなたは筋金入りのいい漁師だ。この竹森神社に願いをかけると、あなたの病気はなおります。』
と告げたとたん消えてしまった。漁師は銀の雀の告げた通り、乙部の竹森神社に来て供え物をあげ参拝して帰郷した。日増しに回復に向かい元気を取り戻した。ふるさとの山や川、海は本当に有り難いものだ、としみじみ思った」
竹森神社境内前に小さな池があるが、一年中水が枯れることのないのは不思議なことである。毎年六月には旭岱部落の有志によってお祭りがひらかれる。
また、この竹森は対象十三年五月三十日付けで林野庁が「航行目標保安林」として指定している。この航行目標保安林は北海道では一ヶ所しかなく大変と珍しい存在であり、自然環境に恵まれたこの山を、町のシンボルとして保存したいものです。
葉梨孝幸「おとべ百話 民話・伝説・史話」1999 乙部町史研究室
神の名前:竹森の龍神さん
何の神か:炭焼き(のちに漁業も)
祀っている人:炭焼き従業者(のちに漁師も)
祀っているところ:竹森神社
その他:※祭り(竹森龍神さんの祭り)5月5日ころに竹森山へ入る炭焼き従業者が祭りをしていたが、約10年前から人が入らなくなり、一時期大山神社例大祭と合同で行っていた。数年前からは漁師も参加して大漁祈願祭と名称も変化して祭りを合同で行っている。 佐々木馨「北海道の宗教と信仰」2009 山川出版社 P206
※未転記 坂口延幸「箱館昔話(七号)」1995/4 有限会社 パルス企画