虫の知らせ

#071 / 上磯町(北斗市) 竜神に身ささげた照姫

上磯であった龍神への人身御供のはなし

住所
北斗市 戸切地 戸切地川
緯度、経度
41.774497, 140.586809(詳細不明、暫定の場所)
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

「竜神に身ささげた照姫」

恐怖の人身御供のはて 上磯


これは道内にわずかに伝わる若い女性の人身御供の物語である。竜神に身をささげたその姫は毎年、わが館に戻ってくるが、正体はヘビと化していたというおどろおどろしい話しだ。「北方文明史話」に出てくる。

秋も深まってきたというのに、上磯の戸切地川にはサケがのぼってこなかった。沿岸の人々は毎日、川辺に立って待ち続けたが、その気配もなかった。はるか駒ケ岳に雪が降った。だがサケはついに姿を見せなかった。いつもサケを獲って冬籠りの支度をしている村人たちは、これでは暮らしていくこともできないといって嘆いた。

翌年も翌々年もサケはのぼってこなかった。人々は食べものがないまま疲弊しきり、住み慣れたこの地を捨てて他へ移っていくものが日を追って増えていった。

元禄二年(一六八九年)秋。郷士の岡田文太夫は気ばかり焦りながらどうすることもできないままに、いよいよ悲壮な決意を固め、竜神に祈願した。

「わが娘、雪姫を差し上げますので、何とかサケをのぼらせたまえ」

文太夫には二人の姫がいて、雪姫は妹姫だった。

七日間の祈願が終わったとたん、戸切地川を黒々と覆うようにサケの群れが押し寄せた。飢え切っていた人々は歓喜にうち震えながら川面にあふれるサケを獲りまくった。

文太夫は竜神がわが願いを聞き届けてくれたと感謝し、雪姫に理由を説明して竜神のもとへ遣わそうとした。だがこの話しをきいた雪姫は驚愕し、拒絶した。これを知った姉の照姫は、

「私が村人たちの犠牲になって竜神のもとへ行きましょう」

と父に申し出た。

恐ろしい嵐の夜。不意に文太夫の屋敷の門をたたいて竜神の迎えがやってきた。照姫は白蝋のように冷たい表情で迎えの舟に乗り、嵐吹きすさぶ海へと消えていった。

それから毎年、サケが群れをなしてのぼり、照姫が人身御供として去った日になるとかならず海が荒れ、照姫が惚然とやってきた。照姫は両親や妹の雪姫と再会を喜び合ったが、眠る時は部屋の戸を固く閉ざしてだれも近づけなかった。

そんなことが何年も続いて五年目の秋、物凄く海が荒れて照姫がまた帰ってきた。

妹の雪姫は、姉がけっして見てはいけないという言葉にかえって好奇心を抱き、寝ている照姫の部屋をのぞき見て仰天した。そこには大きなヘビがとぐろを巻いて横たわっていた。

翌朝、照姫はうらめしそうに、

「あれほど見てはいけないと言ったのに、裏切られるとは情けない」

と言い、おののく雪姫に帯一筋を与え、荒れる海へ消えて行った。

それっきり照姫はふたたび姿を見せることはなかった。

文太夫の屋敷は上磯町濁川の日向岡と呼ばれる小高い丘にあったといい、近くの寺に位牌が現存する。だが哀しい人身御供の話しとともに、それを知る人は少なくなった。

合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
参考資料・情報など
北海道おどろおどろ物語
合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
現地確認状況
未確認
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
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