虫の知らせ

#070 / 竜神の棲む家

大石の沼に棲む竜神さま

住所
調査中
緯度、経度
41.91652124801891,140.5886721611023(登山道入り口)
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

「竜神の棲む家」

大石の沼の伝え 大野三石


大野町に残る大石の沼の話は、深刻な水争いのあげく、農民たちが神の棲む沼に手を出して騒動になった伝えである。開拓期の水不足は想像以上に深刻だったことがうかがえて、興味深い。

この地帯は明治初め(一八七〇年代)から水田作りが盛んになり、大野平野が一面、水田になるにつれて用水がより必要になった。農民たちは大野川だけでなく久根別川の水まで引いたが、それでもたりず、そこここで"水争い"が起こり、いがみ合いが続いた。

こうなったら大沼の水を引く以外方法がなかった。大沼なら水はあり余るほどあるのだが、しかし水路を作るのに集落みんなが力を合わせなえればならない。醜いいがみ合いをしているもの同士なので、そんな相談もできなかった。

思案しているうち、市渡の連中が毛無山の中腹にある大石の沼に目をつけた。

「いや、あの沼には竜神さまが棲んでいるから、めったなことをしては罰が当たるぞ」

「しかし、このままじゃ田んぼが干せ上がってしまうでねぇか」

口から泡を飛ばして論議の果てに、背に腹は変えられぬとばかり用水工事に取りかかった。大沼から引くことを考えれば、まだずっと楽だった。

標高四百メートルの高地にある沼から水を引き、沢伝いに大野川へ落とす用水路を作るのだが、これが予想を上回る難工事になった。それでも集落の農民たちが何日もかかって山腹に水路をつける作業を続けた。

努力が実ってあと一日で開通という日、突然、大雨が降りしきり、雷鳴がとどろいた。雷鳴はおどろおどろしく腹腸を揺すった。集落の人たちはその凄まじさに、

「やっぱり竜神様が怒ったのだ。あの水を田んぼに引いてしまったら、竜神様の棲むところがなくなる」

とおののき、あわてて工事を中断した。

市渡の竜神の話はすぐにあたりに知れわたった。大石の沼から水を引いたら少しは争いもなくなると思っていたほかの集落の連中も竜神のたたりを聞いておじけづき、一日も早く大沼から用水を引こう、ということになった。

集落の代表者が集まって計画が立てられ、みんなの協力で用水路の工事が始まった。それからというもの水争いをしたら竜神が怒るといって恐れられた、という。以上は市渡に住む花巻源一郎翁が子供のころ、祖父母に聞かされた話をもとにしたものである。

大石の沼はいまも竜神が棲むと信じられている。大石というのはこの沢から流れる水と大野川が合流する地点に大きな石があるところからついた。

市渡交差点から江差山道を十キロ余り、大野川の釣り橋を渡って毛無山の七合目付近に沼がある。周囲には寝曲がり竹が覆い茂り、ミズバショウが咲いている。水を落とそうと途中まで作った堀の跡も残っており、当時をしのばせる。

合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
参考資料・情報など
北海道おどろおどろ物語
合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
現地確認状況
未確認
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
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