#152 / 枝幸 龍神がすむ神威岬

枝幸 龍神がすむ神威岬

住所
枝幸郡枝幸町目梨泊
緯度、経度
45.059929, 142.504302
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

枝幸町と浜頓別町の境界となっている「神威岬」は、古くから「神」の宿る地として大切に敬われてきました。幕末の大探検家、松浦武四郎は、この地に暮らすアイヌ民族が、神威岬を通る度にイナウ(木幣)を捧げていたことを記録しています。また、明治時代にこの地に入植した人々も「神威岬に龍神がすむ」と信じていました。

ミュージアム通信2014 5月号 | デジタルミュージアム - 枝幸町ホームページ
由来2

昔ばなし発掘

(5)斜内山道の竜神さま

浜頓別と枝幸の町界になっている神威岬は、昔から人々の歩行をはばむ難所で、苦労してこの岬を越えた記録がたくさん残っています。

アイヌの人は、この岬を「カムイエト」(一般には”神の鼻”と訳されている)と呼び、山道に連なる山の一つに「カムイポウシ」(”熊の仔のいる所”の意)と、「カムイ ミウシ」(”神をいつも祀る所”の意)の地名を残し、昔から、髪の住むところとされ、最近まで女人禁制の山でした。

この山道がいつ頃から「竜神さま」が祀られるようになったのかさだかではありませんが、竜神さまは、山道の奥に沼があって、そこに住んでいるとも伝えられています。

「私の若かったころ、ある時行者がきて泊まり、”この山には竜神さまがいる”と教えていった」とある古老が語っています。

ある年、山火事があって斜内の部落が危険な状態になった時部落の勇姿が山に登り、竜神さまに供物を捧げて部落の安泰を祈り下山したとたんに大雨が降ったり、山火事は消えて社内の部落は難を逃れたということです。

また、ウソタンの砂金山が盛んな頃、魚を持って山越えの行商をしていた人が、ある日、高さ一尺五寸(約45センチ)ほどの大きさの大きさのとぐろを巻いていたもの(蛇という言葉は禁句であった)を見たとか、あるいは、かつて現在の燈台付近で鳥糞採取をしたことがあるという現場で、ある時、樽ほどの太さで鱗がキラキラ光っていたものが、鳥糞を落とす樋に一杯となって姿を見せ、それ以来採取をとりやめた、などの話が伝えられています。

今は、斜内の花田さんのおばあちゃんが、燈台の近くに祠を建て竜神さまを祀っています。

P53

佐藤豊「筆しずく」2002年 (株)総北海
由来3

昔ばなし発掘

(8)竜神の沼は幻の沼か

斜内山道に沼があるという言い伝えがあり、その名も「竜神沼」ということです。

広さは六畳くらいともいわれ、満々と水をたたえ、苔(こけ)むした岩石の間にどんよりと不気味に鎮まり返っていて、その深さは計り知れず、オホーツクの海に続いているとさえ言われていて、小石を投げ入れるとドボンと鈍い音をたて、沼の深さを物語るそうです。

この沼には蛇(じゃ)の主が住むとも伝えられています。しかし、実際にこの沼を見た人は少ないようです。

大正年間に山火事があり、その消化のため山に登った人が偶然に見た沼は、沼というほどのものではなく、岩石の間の大きなくぼ地に水がたまり、青く藻(も)がはえていたそうですがはたして、これが伝えられている沼かどうかわからないということです。

ただ、この山火事のとき大きな蛇が焼け死に「主」だと騒がれ、枝幸から学校の生徒が、わざわざ歩いて見学に来たほどで、当時「北海道一ではないか」とうわさされたそうですが、もう七十年も前のことです。

私たちも現地踏地を数回試みましたが、沼らしいものはついに発見することができませんでした。

佐藤豊「筆しずく」2002年 (株)総北海
参考資料・情報など
デジタルミュージアム - 枝幸町ホームページ
ミュージアム通信2014 5月号 | デジタルミュージアム - 枝幸町ホームページ
「筆しずく」
佐藤豊「筆しずく」2002年 (株)総北海
現地確認状況
未確認
その他

写真家Oさんに教えてもらった情報を元に辿り着いた。山下享二写真集「北オホーツク」にはかつてあった社の建物と鳥居の姿がある。 燈台の向かって右側に建っていた貴重な記録。 その後、御神体は関係者のご自宅に移してあることが写真集のテキストから伝わってくる。 当然のようにそこにあったものはなくなり、その後の顛末がわからなくなることが少なくない。 写真と共に綴られたテキストはその後のことが後のものへと受け継がれる貴重な資料となる。

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※関連・・・#222_斜内白竜大社


2022/9/14 記載

2022年9月3日土曜日、早朝5時30分に札幌を出発し、国道275号線を北上。雨竜町から道道47号線をひた走る。GoogleMapを頼りに幌加内の蕎麦畑の脇を抜けて、朱鞠内湖の横を通る。美深の町をかすって更に北上を続け、海岸線の枝幸に至る。時刻は10時を回ったころに一つ目の目標である、浜頓別にある北見神威岬に到着した。ほとんどの道が内陸だったが峠が少なく距離は長いとはいえ道は概ね走りやすかった。

砂浜には投げ釣りの竿が3桁はありそうな数、等間隔に並んでいる。何を釣っているのかわからなかったが、河口ではなかったので鮭釣りではないのだろう。海岸線の景色に道北を感じる。背丈の低い植物が海岸沿いの丘陵を覆っている。まるで異国にたどり着いたかのような景色を横目に、国道238号線から右折して神威岬への道を進む。早朝の自動車に備わっている温度計では13度ぐらいだったが、岬に到着した頃には急速に気温が上昇してきた。

岬の先端は車がすれ違うことができない1車線の道を経て目的であるオホーツク海の北見神威岬の灯台にたどり着いた。2017年に崩落があって通行止めになっていたが2020年に開通したということは帰ってきてから知った。もしも通れなかったら反対側から岬にアプローチする必要があったのかもしれないが運がいい。私はいつも運が良く、運が良いだけでここまでどうにか生きてきている。いつか運が尽きるまで楽しく生きていきたい。楽しく生きるとはなかなか難しく、いつも目的地に向かって急いで寄り道もせずに脇目も振らずに必死で辿り着こうとしてしまう。歳をとって中年になってからしばらく経ったことだし、もう少し地に足をつけていきたいものである。少なくとも目的地に全力で向かうにも体力が低下して休憩する必要が出てきたので、一息を着く余裕ができたというか、休憩をしなければならない状況になって、やっと少しは結果的にゆとりがある行動ができるようになってきたのかもしれない。

かつて灯台の麓に白竜社があった。浜頓別出身の写真家Oさんに教えてもらった写真集「北オホーツク」を片手に持ちながら灯台へと続く砂利道を登った。距離的には数百メートルほどしかないが、道は途中から藪に覆われて草を踏み倒しながら進むことになった。

灯台に向かって左側に祠がある写真が写真集には掲載されていた。それと目の前の景色を比較して、祠のあった位置を探ってみる。灯台の角度や岩の感じなどを手掛かりに、概ね祠があった場所が特定できた。どうやらレンズは35mmをもちいて撮影されているようだ。

北見神威岬から見えるゴツゴツした岩に囲まれた岩壁と澄んだ水は美しかった。ここから見える景色に何かを感じて行者は龍の姿をこの地に見出したのだろうか。積丹を彷彿させる美しいその景色に、神威岬の名の通りかつてここがアイヌの聖地であったことがわかる気がした。灯台の足元を国鉄興浜北線が走っていたというが、ここまで線路をひいた名もなき人々の多大な苦労が偲ばれる。時代を運んだ国鉄を、鉄道員の息子として想像してみる。 ふらふらと灯台の付近を歩いていると、目立つからだろうか、車で通りがかりの人が物珍しそうに立ち寄ってきた。写真を撮っているとそこに何かあるのか気になるようだ。

長い時間がかかってしまったがやっとこの場所に来ることができた。しばし付近を散策して満足した。写真集に書いてあった、かつてここにあった祠の御神体を保存しているという方を探すために車を走らせてすぐ、国道沿いで花壇の手入れをしていた熟年夫婦を見つけて車を停めた。写真集を片手に話を聞いてみた。

写真集を開いて祠の写真を見せながら話を聞いてみた。おじさんは祠があったことを覚えており、信仰こそしていなかったが、信者さんは集まっていたことを覚えていた。お祭りなども行われているようで、遠くは枝幸などからも訪れる人がいたという。

写真集に名前が載っていた、御神体を保存している方の自宅を教えてもらった。尋ねてみたが生憎留守であった。帰るまで待つという選択も検討したが、時間が全くよめなかったのでまた今度と諦めた。すぐ近くに松浦武四郎が宿営したことを記念したパネルが掲げられていた。松浦武四郎は北見神威岬を交通の難所と記していた。

次の目的地に気持ちを切り替えた。北海道は札幌近郊以外、基本的に店がないことの方が多いため、ちょうどあったコンビニで食事を購入した。頓別川を過ぎて、ベニア公園に車を止めて食事をする。遠くにテントを張ったり歩いたりしている人たちの姿を眺めた。天気がよく気温が上昇しており、ピクニック日和だった。

山下享二写真集「北オホーツク」 編集 牛島博能 2005/1/25 凸版印刷株式会社

更新履歴
2017/03/11 記載
2022/05/28 由来2、3追記、写真資料追加
2022/09/14 その他追記、写真追加
山下享二写真集「北オホーツク」 編集 牛島博能 2005/1/25 凸版印刷株式会社
2022/09/03
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