青森とのつながり

明治には北海道への移住者が最も多かった青森県と関係のある神社をここではまとめています。

北海道の龍神信仰を調べていくにつれて、明治時代以降に青森から不況のために全道各地を訪れた、主に神道のひとつを布教するゴミソ・カミサマと呼ばれる呪術師の存在が浮上してきました。 青森県つがる市牛潟町にある高山稲荷神社はその中でも中心的な役割を担い、ゴミソに神習教の教導職免許状の斡旋を行い布教活動に努めたといいます。 2017年に高山稲荷神社に行った際に驚いたのは、木製の朱色の灯篭に記載されている氏子の住所に、札幌や恵庭や室蘭や函館など、北海道の方が非常に多くありました。 正確には数えていませんが半数以上は北海道の住所だった印象です。

No. 場所 神社名 由来、概要 参考資料
1 伊達市北黄金町47 粟島明神 斉主の神告には青森県の岩木神ほか諸方の神々が現れるという。 伊達市史編さん委員会「伊達市史」1994 株式会社 ぎょうせい
※こちらの斉主小田桐ひさ氏について、別の資料で記載があった。こちらに引用する

(6) 祟りの療法 津軽で修業をつんだ祈祷師小田切ひさという人は、一般に「栗嶋さま」といわれている。栗嶋大明神を主神とし、副神は山ノ神・岩木山の稲荷・津軽の高山稲荷である。

療法は、虫切りと歯痛は御幣と数珠でお祓いをし、ほかの病気は神のお告げ通りにする。

お障り(仏の祟りの場合はお障りという)は、お札を焼いたとか、何かを粗末に扱った場合であるが、原因は祈祷によりお祓いで治す。体の悪い部分は祈祷をしていると、神や仏が患部を知らせてくれる。

祟りや障りは、祈祷しているときに、目の前に障っているものが現れる。障るものは、生霊・仏・長ものが殆どである。医者の治療薬が思うように効かないときは、本人の障りを取り除けばよくなるといわれる。

障りを取り除くには、祈祷とその結果に基づく呪いである。神さまにお握り二つとか、卵とお酒とかをお告げによってお供えする。障りを除くときは、本人より代理に拝んで貰った方が治りやすいという。

高倉新一郎監修「北海道の研究 第7巻 民俗・民族篇」1985 清文堂出版株式会社 pp. 29
2 札幌市豊平区豊平4条13丁目1番18号 豊平神社 今の青森県南津軽郡猿賀山に神霊を勧請して社殿を建立したもの。猿賀神社が本社 北海道神社庁のホームページ、豊平神社
3 河西郡更別村字更別南2線91番地 更別神社 昭和3年島根・青森・愛媛各県より団体移住した開拓民一同相議り昭和6年5月11日現在地に社殿を造営し、祭神として天照大神・大国主大神2柱を鎮斎し更別村の鎮守の神社として創祀された。 北海道神社庁のホームページ
4 紋別郡雄武町字雄武1485番地 雄武神社 雄武神社の創立は明治18年青森県人が雄武に来住しオホーツク海に於て漁場を経営するに当りて海浜を一望する丘に小祠を建て豊漁を祈願したことに始まる。 北海道神社庁のホームページ、雄武神社
5 枝幸郡枝幸町新栄町536番地1 厳島神社 文政2年当地方漁場請負人近江国愛知郡枝村藤野四郎兵衛の支配人青森県閉伊郡大畑村字島沢の住人吉井茂兵衛なるもの主家藤野家の信仰に係る厳島の御分霊を奉遷し、小社を建立した。 北海道神社庁のホームページ、厳島神社
6 礼文郡礼文町大字船泊町字ヲションナイ406番地 礼文神社 文久3年青森県人秋田佐吉及田中太四蔵等が、本村茂尻湖(現久種湖)の主神として大沼神社と称し、湖畔の一隅に小祠を建築し崇拝された。 北海道神社庁のホームページ
7 利尻郡利尻町仙法志字本町93番地 仙法志神社 明治3年青森県小泊村の人伊藤米八が漁場開設に祭し元村地区に奉斎されていた小祀を祀ったのが始まりとされるが詳細不明。 北海道神社庁のホームページ、仙法志神社
8 虻田郡洞爺湖町字青葉町54番地 虻田神社 末社に赤倉神社あり 北海道神社庁のホームページ、虻田神社
9 久遠郡せたな町北檜山区丹羽7番地5 玉川神社 青森県岩木神社の祭神坂上苅田麻呂命・坂上田村麻呂命の御分霊を戴き地区中央の高台に社を建立 北海道神社庁のホームページ、玉川神社
10 利尻島字仙法志字御崎 鳴海の稲荷さん 青蘇察西津軽郡車力村より布教者が布教に訪れ高山稲荷をまつってある 工藤浄真「利尻島における稲荷信仰について」
11 室蘭市東町5丁目284-9 岩木山神社 (室蘭八幡宮裏手) 1934年(昭和9) 2013年(平成25) 青森県出身者(室蘭岩木山講員) 金子 直樹「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」
12 函館市高盛町 岩木神社 戦前? 近年? カミサマ系宗教者? 金子 直樹「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」
13 天塩郡豊富町 岩木神社 明治末? 昭和50年代末 金子 直樹「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」
14 斜里郡清里町上斜里 岩木神社 1915年(大正4)頃 1993年(平成5) 青森県出身者(青森団体) 金子 直樹「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」
15 室蘭市本輪西町3丁目28−8 本輪西八幡神社境内 1956年(昭和31) ? 青森県出身者 金子 直樹「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」
16 室蘭市東町5丁目284−9 北海道岩木山神社 青森県出身者(県人会) 金子 直樹「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」
17 檜山郡 江差町 笹山稲荷 津軽の名社高山神社(五所川原近郊)の流れをくみ、その因念が大変深いのだという 江差民話研究会編「江差百話 江差の民話・伝説・史話」1993 江差民話研究会
#136 / 江差町 笹山稲荷
18 礼文郡礼文町船泊村 高山神社 調査中。高山稲荷と関係がある?
19 礼文郡礼文町船泊村 高山神社 調査中。高山稲荷と関係がある?
20 岩内郡岩内町清住 高山神社 調査中。高山稲荷と関係がある?
21 松前郡松前町神明66 徳山大神宮 往古秋田・津軽の漁民が年々春夏の季節に当地に渡海して漁業を営み、秋季に帰国した 北海道神社庁のホームページ、徳山大神宮
22 函館市中島町29 函館岩木講社 昭和期における教派神道 「函館市史」通説編3 5編4章5節1-4
23 函館市大縄町16 赤倉講社 昭和期における教派神道 「函館市史」通説編3 5編4章5節1-4
24 函館市東川町12 高山講社 昭和期における教派神道 「函館市史」通説編3 5編4章5節1-4
25 函館市駒場町18 高山福稲荷講社 昭和期における教派神道 「函館市史」通説編3 5編4章5節1-4
26 白老郡白老町字虎杖浜 虎杖浜神社 漁名神社を合祀する際に、高山稲荷神社よりお札をもらった 町内会、白老八幡神社様に聞き取りで確認(2019/8/29)
※緑色の木のアイコンが神社の場所です

参考文献
No. 著者名 タイトル 発行年 出版社、サイト
1 和歌森 太郎編 「津軽の民族」 1974 吉川弘文館
2 村上 晶 「現代巫者研究―知識の日常的交渉の観点から―」 2016 DA07603.pdf
3 金子 直樹 「岩木山信仰の伝播について―主に信仰圏の背景と北海道への展開を中心にして―」 2016 Online ISSN : 1880-8107
4 江差民話研究会編 「江差百話 江差の民話・伝説・史話」 1993 江差民話研究会
5 工藤浄真 利尻町立博物館年総第5集「利尻島における稲荷信仰について」 1986 工藤浄真「利尻島における稲荷信仰について」
6 髙橋 晋一 「津軽海峡文化圏における民俗宗教の共通性 : 神社信仰・シャーマニズム・講集団を中心として」 1999/2 徳島大学総合科学部人間社会文化研究
津軽海峡文化圏における民俗宗教の共通性 : 神社信仰・シャーマニズム・講集団を中心として
7 北海道神社庁札幌支部 「北海道神社庁のホームページ」 2003 北海道神社庁のホームページ
8 函館市、編集員和泉雄三・榎森進・神田健策・桑原真人・小林真人・紺野哲也・佐々木馨・佐竹道盛・清水恵・菅原繁昭・鈴木旭・田端宏・辻喜久子・永野弥三雄・中居裕・根本直樹・船津功・渡辺道子、執筆員大熊敏之・酒井嘉子・桜井健治・故佐藤清一・竹内修一・富岡由夫 「函館市史」デジタル版 通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 「函館市史」通説編3 5編4章5節1-4
8 伊達市史編さん委員会 「伊達市史」 1994 株式会社 ぎょうせい