#076 / 白糠町庶路 あの世へ通じる沼の穴

人間にたたる大きなヘビが棲んでいる沼とあの世の入り口の穴

住所
白糠郡白糠町庶路
緯度、経度
43.10744, 144.03789(詳細不明、暫定場所)
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

「あの世へ通じる沼の穴」

手招く死者の霊 白糠


白糠町庶路に古くから恐れられている沼と穴がある。沼には大きなヘビが棲んでいて人間にたたるといわれ、穴は死者があの世へ行く入り口といって忌み嫌われた。「北海道の伝説」に恐怖に満ちた物語として書かれている。

白糠町庶路からおよそ二十キロほど離れた山中に不気味な沼が広がっている。

昔、この沼に直径三十センチもある大きなヘビが棲みついた。大ヘビは古沼からのっそり姿を現し、時々四キロほど離れた茶路の沼へ出かけていくのだが、ヘビが通った後は物凄い悪臭がただよい、押し倒されたヨシやカヤはそのまま枯れてしまったという。

もっとも恐ろしいのは大へびのたたりで、大ヘビの姿を見た者はかならず原因不明の重い病気にかかり、うわ言を言いながら死んでしまう、という。

ある年、勇猛な若者が、

「人間に災いを与える大ヘビを懲らしめてやる」

と言って出かけたが、現れた大ヘビに絡みつかれて身動きできなくなり、放心状態になって集落に戻ったものの、気が触れたように奇妙なことばかり口にし、そのあげく死んでしまった。人々は、

「大ヘビにたたられるから、古沼に近づいてはならぬ」

と言っておののき、近くに祠を作って祈った。

祭りの日には生きたニワトリを木にぶらさげ、大ヘビにささげるのだが、翌朝は跡かたもなくなっていた、という。

もう一つ、庶路川の上流川岸に大きな穴があいていたそうだ。この穴が死者のあの世への入り口といわれ、阿寒に通じる穴ともいわれた。

伝承が生まれたのはこんな不思議な出来事からだった。

ある時、仮人に追われた大グマが川岸を伝ってその穴へ逃げ込んだ。狩人の連れていた二匹のイヌがクマを追跡して穴に駆け込んだ。

しばらくして一匹のイヌだけが穴を伝って阿寒岳のふもとへ出たが、もう一匹のイヌはついに戻ってこなかった。クマは途中でイヌに襲われて絶命したのか、ついに出てこなかった。

狩人がクマを探して穴に入ってみたが、どこまでも深くて暗く続いており、いくらも行かないで断念しなければならなかった。

それからというものこの穴は、道が途中で二つに分かれていて、一方は阿寒岳ふもとに通じており、もう一方はあの世につながっている、といわれるようになった。

穴に近付くと何か不気味な音が聞こえ、死者が手招くともいわれ、

「穴に近寄ったら悪いことが起きる」

と言って恐れたそうだ。

だがその穴も、どこにあるのか知る人はいない。

合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
由来2

庶路の古沼と地獄穴 --白糠--

白糠町庶路駅からおよそ二十キロほど離れた山の中にみるからに気味の悪い沼があります。そしてこの沼には太さが三十センチもあるような大蛇が棲みついているといわれます。

この大蛇は、ときどき四キロ離れた茶路の沼に行きますが、蛇が通ったあとはよしやかやは、みな枯れてしまうばかりか、なまぐさいにおいがあたりにただよい、もし蛇の姿をみるとひどい病いになるといわれています。

むかし、この蛇の姿をみて重い病いになった人もいて、村人は恐れておまつりをするようになりました。

大蛇への供えものは生きた鶏で、木にぶらさげておくと翌日にはあとかたもなくなっているということです。

また、庶路川の上流には阿寒に抜ける穴があるといわれています。この穴は死者があの世へ行くときの入口でもあるといいます。

むかし、二匹の犬が熊を追っていたところ熊はこの穴に逃げこんでしまいました。二匹の犬もつづいてこの穴に入りましたが、一匹の犬は熊を追って阿寒岳の麓へ抜け出しました。ところがもう一匹の犬はついに出てきませんでした。

おそらく、この穴はなかで二つの道に別れており、二匹の犬はこの別れ道を別々に進み、一匹はあの世へ行ったのだといわれています。

(北海道の伝説・再話)

北海道口承文芸研究会編「北海道昔ばなし 道東編」1989 中西出版
参考資料・情報など
北海道おどろおどろ物語
合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
北海道昔ばなし 道東編
北海道口承文芸研究会編「北海道昔ばなし 道東編」1989 中西出版
現地確認状況
未確認
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
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