#057 / 奥尻島の蛇とネズミ

蛇とネズミのイタチごっこ

住所
奥尻郡奥尻町
緯度、経度
42.159524, 139.450528(詳細不明)
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

奥尻島は昔から蛇とネズミで有名である。菅江真澄の「えみしのさへき」に、次のような話がある。

[奥尻島の蛇とネズミ]


この島にはたくさんのネズミが住んでいて、餌をあさる音は、まるで鳥の群がいっせいに飛びたつ羽音のようだ。潮が引いているときは、ネズミがアワビを引き上げ、集まって食うのである。また気や草の根を掘って食い、しの竹の葉までくい尽くし、しまいには共食いまでして、その暴れまわる音が山や海にひびいてやかましい。

蛇もたくさん住んでいるのだが、ネズミに食われてしまうという。だが蛇の多い年は逆にネズミが食われるという。

あるとき船がくつがえり、その船でかっていた猫が二匹、板にのって島に流れついたが、ネズミに追われて、磯辺の岩に逃げこみ、海に落ちたのか、間もなくいなくなってしまった。

以上の話しは真澄の見聞であるから、事実だったと思われるが、河合裸石という人のかいた「奥尻奇譚」には、この実話にヒントを得て作られたと思われる次のような話がある。


[蛇女の話]


むかし津軽小泊の漁師の娘で久代という女がいたが、これがふとしたことから、城主の若様と恋するようになった。父の城主はこれを怒り、以後の見せしめといって二人を小船にのせて竜飛岬から沖に流した。小船は奥尻に漂着した。若い二人は寂しさを忘れて愛しあい、ついに女は身ごもった。やがて出産の時がき、和歌様は人を求めて島内を走りまわった。ところがその留守中にネズミの大群がやってきて彼女の腹を食い破り、彼女は恐ろしい巨蛇の形となった彼女は実は蛇の化身であり、ネズミがその魔性を見破ったのである。帰ってきてこれを見た若様は、海に身を投げて死んでしまった。ところがその後蛇の大群が来てネズミを食べてしまい、その翌年にはネズミの大群が来て蛇を食べるという具合で、そのような繰り返しが幾百年も続いた。

因みに離島大島にも猫ほどもある大きなネズミが住んでいるという。小樽には又、白蛇がいたと伝えられる赤岩があり、この白蛇に若い女を人身御供する風があり、それを勇敢なアイヌ娘が退治した話、また高野山からきた高尾了範という修行僧が退治した話(明治二十年代)などが伝えられている。

須藤隆仙「北海道の伝記」1971 山音文学会
由来2

大成の沖にある奥尻島には昔は蛇歳と鼠歳とがあって、蛇歳には蛇が島中の鼠を襲って島を独占し、鼠歳には遭難した船に乗せていた猫が、鼠に食い殺されたなどといった。それを素材にして、津軽の殿様の若者と漁師の娘とが恋仲になり、海に流され辰巳の風に乗って奥尻島に着いたが、若者の留守中鼠の大群が娘を襲って腹を食い破ると、娘は巨蛇の姿になったなどというような話にまで発展したりした。

更科源蔵・安藤美紀夫「17 北海道の伝説」1977 角川書店
参考資料・情報など
北海道の伝記
須藤隆仙「北海道の伝記」1971 山音文学会
17 北海道の伝説
更科源蔵・安藤美紀夫「17 北海道の伝説」1977 角川書店
現地確認状況
未確認
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
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