#017 / 函館 丸山龍神宮

山で働く林業者などには山の神、ふもとの町・戸井の漁師には大漁の神とする神様が祭られている

住所
函館市 米原町 丸山龍神宮
緯度、経度
41.773668, 140.991203(登山口の鳥居の場所)
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

戸井と旧亀尾村の境に丸山(標高四〇八m)という山あり、ここに昔から竜神がいるといわれ旧五月五日には大漁祈願の参詣人が多数登山したものである。以下その状況を「戸井郷土史」(野呂進編著)から抜すいしてみよう。「参詣の人々は木で大刀小刀を作って腰にさして登山し、鳥居の前に煙草をおいてお堂のあるところまで登る。竜神は煙草を嫌うと信じられ、鳥居をくぐったら煙草を吸わなかったものである。お堂の近くに北向きの穴があり、その穴の中に竜神がいると信じられている。参詣の人々は穴の前に持って行った卵、魚、赤飯などを供え、鰮、鮪、鰤、いか、などの大漁をそれぞれ祈願し、お堂の所へ戻って持参した酒をくみ交しながら雑談をして、三十分位して穴の所へ行って供物の状態を見るのである……」以上のようなわけで、この二度目に行ってみると不思議に供物がなくなってるそうで、それによって今年は何が大漁か判断するそうである。木の大小刀は堂の処へおいて帰るそうである。(この丸山竜神については、それが大蛇で、あるとき木こりがこれを殺したところ、木こりは一週間目に死んだとか、雄雌二匹いた大蛇のどちらかが殺されたので、供物の受け方が違ってきたとか、現在は丸山に竜神はいないのではないか、など、さまざまに取り沙汰され、とくに昭和四十三年七月八日に供物がなくなる奇跡があったとも報告されている)

部落にはまた字入沢に栃の大木あり、これが樹令八百年以上とされ、これを切ると出血しその人に奇禍があると信じられ、これに竜神を祀って雨乞いなどの祈願をするものがあるが、樹木信仰とミックスされたものである。

須藤隆仙「北海道の伝記」1971 山音文学会
由来2

「供えたタマゴ、魚消える」

怪異な竜神信仰占い 戸井


戸井町と函館市の境界近くに丸山という山がある。この頂上の「お穴」に竜神が棲んでいて供物を受け取るというのだ。この不気味な現象はいまも続いている、という「北国の史話と伝説」に紹介されている。

丸山は海抜四百八メートルの鋭い円錐形の山だ。昔、きこりがここでヘビに襲われ、格闘のすえやっと殺したところ、死体にカラスが群れ集まり、きこりは間もなく原因不明の高熱を出して死んでしまった。恐れをなした仲間のきこりたちが山頂に祠を祀った。

ここから三十メートルほど離れたところに「お穴」があり、きこりに殺されなかったもう一匹のヘビが供物を受け取ると信じられていた。

祠は、きこりたちから「山の神」、漁師たちから「大漁の神」と信仰され、祭りの日に供物を上げるのがならわしになった。祭りは旧暦五月五日の端午の節句で、当日は参詣者たちが木で作った太刀、小刀を腰に差して登り、鳥居の前にタバコを置いて祠まで登る。竜神はタバコを嫌うので吸ってはいけないとされているからだ。

祠に着くと、酒、魚、タマゴ、赤飯、菓子、果物などを供えて礼拝し、一部の人たちが頂上の「お穴」に行き、同じように供物を供えて礼拝し、祠へ戻る。

ここで供物をおろして酒を酌み交わし、三十分ぐらいして何人かがふたたび「お穴」へおもむくと、供えた魚やタマゴなどのうちいくつかかならずなくなっており、これにより「今年はマグロが大漁だ」とか「イワシはダメだ」というように吉凶を判断するのである。参詣が終わると人々は、持って行った木の大刀、小刀を祠に置いて下山する。

この供物がなくなるのを、昔から竜神が受け取る、と信じられているのだ。

「そんな馬鹿なことがあるか。カラスかネズミが持って行くのだろう」

と言って「お穴」の前でねばってみても何事も起こらない。竜神は人間の見ている前には姿を現さない、というのだ。だから「お穴」に供物を置いて祠まで下がり、ふたたび「お穴」へ行かねばならない。

こうした丸山詣でも近年は、木の刀を持って行かなくなり、タバコも祠の前で吸うようになった。しか「お穴」の供物が消えるのはいまも変わらない。

昭和四十三年(一九六八年)七月八日、丸山信仰の九人が山道のササ刈りと境内の清掃をした後、祠に供物を上げ、「お穴」に行くと、空瓶と皿があるだけで供物がすべてなくなっていた。

翌年七月三日は丸山信仰に疑念を抱く連中も混じって十七人が山へ登り、十七個の供物を供え、三十分後に行ってみると十三個がなくなり、一個は殻が破られ、中味がなくなっていた。参加した連中はただただ恐怖に顔を引きつらせた。

合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
参考資料・情報など
北海道の伝記
須藤隆仙「北海道の伝記」1971 山音文学会
北海道おどろおどろ物語
合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
北海道縁起物語
小林成光「北海道縁起物語」1992/5/1 有限会社 小林興業社
戸井町史
編集者 戸井町史編纂委員会(編集責任者 野呂進)「戸井町史」1973/3 戸井町役場
現地確認状況
確認済み (2023/9/23
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
2024/01/07 場所修正(登山口にマッピング
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