偕楽園緑地の近隣に住む住民にあった水神信仰
偕楽園緑地の一角には「井頭(いのがみ)龍神」という社が建っている。当時の偕楽園内にもメムがあり、明治天皇が北海道行幸の際に手を洗われたことから、「御膳水」として呼ばれていた。そして、いつしか近隣住民の間に水神信仰が生まれたことに、その社の起源をたどることができる。
そしてこの水神信仰は特に水商売の女性の間に浸透していった。「いく代」という名前を覚えているだろうか。昭和後期まで「夜の赤レンガ」との異名をとった道内一の料亭である。ここの初代女将斉藤いくは一時期、サクシュコトニ川のほとりに店を構えたことがあり、同業の女性らと共に熱心にお参りを続け、この水を「神水」として得意先に配ったりしたという。また、奇特な人たちがいく代やそのほかの水商売の人たちに呼び掛けて昭和25(1950)年ごろには御膳水の近くに小さいながらもお宮を建てた。ささやかではあるが祭礼も執り行なわれるようになった。こうして草の根から生まれた水神信仰は「龍神さん」という具象を得て、今日に伝えられていった。
54.水商売の女性たちが育てた水神信仰/札幌市北区