虫の知らせ

#055 / 小樽の白蛇娘

白蛇が女性の姿に化けて男性と深い仲になるが、やがて海中に没していく物語。

住所
小樽市
緯度、経度
不明
※あくまで目安であり正確な情報ではない場合がありますのでご注意ください
由来

「夜光の珠と白蛇娘」

二つの怪光は大蛇の目 小樽

夜光の珠という怖い話をしよう。白蛇が人間に姿を変えて男性と深い仲になり、夜ごと光る珠に魅せられて、やがては海中に没していく。「北海道の口碑伝説」にくわしい。

小樽は昔、オタルナイと呼ばれ、集落のアイヌたちは丸太船に乗って魚を獲り、暮らしていた。若いイサヤコもその一人だった。

秋も深まった夜、岬の突端に怪異な二つの光が走った。浜辺の人々は恐ろしさに身を震わせた。

「あの夜光の珠がほしいわ」

許嫁のペチカがイサヤコの膝にすがって言った。

「おまえはあれを珠だと思うのか。愚かしいことを言うでない」

やがて冬がきて物凄い暴風が吹きまくり、波浪が小山のように襲って崩れた。夜更けになると怪光はますます強い光を放った。ペチカは家を抜けて一人、岩場の上に立ち、波浪にのまれて海中に没した。

イサヤコははっと眠りから覚めた。ペチカがいないので雪の降りしきる外へ出たが、積雪で歩くことができない。観念して家に戻るとペチカがずぶぬれになって立っていた。

「おーペチカ、おまえはこんな吹雪の夜、どこへ行っていたんだ」

「知らぬ間に浜辺まで」

イサヤコはあの怪光が娘を呪っているように思えてぞっとなった。

翌日の夜も、ペチカはふらふらと浜辺へ出て行き、高波にのまれていった。明け方に帰ってきたペチカの顔は蒼味を帯び、肌は氷のように冷たかった。イサヤコは心配で心配でたまらない。

「ペチカを救うためにもあの怪光の正体をあばいてやる。たとえ怪光に滅ぼされても」

そう決意して月の神に祈った。

「やめて。あの夜光の珠は怪しい魔物なんかじゃありません!」

「何を言うか。あの月の満ちる夜、おまえのほしがる夜光の珠をひっ捕らえてやる!」

満月が近づいた夜、ペチカは岩場の上に立った。人間の姿をしているが、今夜をかぎりにもとの姿に戻らねばならなかった。高波がざぶんと岩場を打ち、しぶきがかかって体が海中に吸い込まれた瞬間、ペチカの肌に白いうろこが光った。

イザヤコは今夜こそ怪光を仕留めてやろうと、小舟を操り怪光に迫った。必死の思いで近づくと、二つの光と見たのはらんらんと光る大蛇の目だった。小刀を振り上げて力いっぱい大蛇の目をめがけて突き刺した。雷光がとどろき毒気があたりに充満した。

と、そばにわなわなと震えながらとぐろを巻く小さな白蛇を見た。白蛇の目に涙が光っているのが見えた。

それっきりイザヤコは意識を失い、主を失った舟が波の間にただよっていた。

合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
由来2




北海道庁編「北海道の口碑伝説」1940 日本教育出版社
参考資料・情報など
北海道おどろおどろ物語
合田一道「北海道おどろおどろ物語」1995 幻洋社
北海道の口碑伝説
北海道庁編「北海道の口碑伝説」1940 日本教育出版社
現地確認状況
未確認
その他
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更新履歴
2016/10/01 記載
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